VLAMOオープンファンファーレ選手権で演奏されるはずだった曲

課題曲The Promised Continent(約束の大陸)

課題曲は1996年ベルギー生まれの若き作曲家、ニック・ヴァンエルセン(Nick Van Elsen)に委嘱されました。
ヴァンエルセンは8歳からアカデミーで音楽教育を受けていましたが、2009年に「ベルギー王国ファンファーレバンド『ケンペンブルーイ』(Koninklijke Fanfare Kempenbloei)」でフリューゲルホルンを吹き始め、音楽への興味を一層高めました。
ケンペンブルーイはベルギーでもトップクラスのファンファーレバンドで、2017年のWMC(世界音楽コンクール)でヴァンエルセンの作品も演奏しています。
Palindroom – KF Kempenbloei(YouTube)

 

吹奏楽らしいトゥッティも、かなりとんがった要素もあり…(まず配置がおかしい)
彼がアントワープ王立音楽院で師事したウィム・ヘンドリクス(Wim Henderickx)とルク・ヴァンホーヴェ(Luc Van Hove)という作曲家は…ベルギーのゴリゴリコンテンポラリー作曲家で…いずれこの2名にも触れられたらいいなと思うのですが。はい。実はお二方ヤン・ヴァンデルローストと同門です。

 

課題曲「約束の大陸」は、旧約聖書の「約束の地」に向かうイスラエルの民と、シリア内戦の難民を関連付けて描いた作品です。
「約束の大陸」作品紹介(EN)
音楽院の卒業制作でもギリシア悲劇「バッコスの信女たち」にIS(イスラム国)の信者の女性たちをなぞらえた舞台作品「EUOI」を制作しています。
「EUOI」作品紹介(EN)
実際に曲が聴けるのはいつになることやら…

Where Angels Fly(天使の飛ぶところ)

このブログでも何度か記事に名前が出てきたケヴィン・ホーベン(Kevin Houben)の作品。「天使の飛ぶところ」自体も、以前の記事(【CDレビュー】Made in Belgium)のポール・ジルソンの項で少し取り上げています。

 

元々2017年のEBBC(欧州ブラスバンド選手権)の課題曲として作曲され、2019年にはコンサートバンド編成にオーケストレーションし直し、自身が指揮者を務める「ベルギー王国ペーアー吹奏楽団(Koninklijke Harmonie van Peer)」で演奏しています。(本当はこの演奏が5月のECWOでも聴けたんだと思う)
【コンサートバンド】Where Angels Fly – Kon. Harmonie van Peer(YouTube)
【ブラスバンド】Where Angels Fly – Brass Band Heist(YouTube)
 

ファンファーレバンド版の楽譜はまだ出版されていないので、おそらく今日のVLOFで初演される予定だったんじゃないのかなあ…ブラスバンド版もコンサートバンド版も大好きなので、ファンファーレバンドの演奏とてもとても楽しみにしていたんですが…聴きたかった…

 

この記事を書くにあたってEBBC2017当時のホーベンのインタビュー(Where Angels Fly|Kevin Houben – test piece Championship Section(EN))を読んだのですが、ヴァンデルロースト(ホーベンの作曲の先生)の話題がめっちゃ出てきてびっくりしました。”an Ode to Jan Van der Roost”ねえ…へーえ、ふーん、ほーお(堪え切れない笑み)

Sang till Norden(北方の歌)

作曲は1995年生まれのロード・ヴァイオレット(Lode Violet)。ベルギーのブラスバンドに関心がある方だと、この”Violet”という姓に見覚えのある方もいらっしゃるのでは。
そう、ロードはベルギーのブラスバンド”Brassband Willebroek”の指揮者フランス・ヴァイオレット(Frans Vioret)の息子であり、同バンドのソロ・コルネット奏者でもあるのです!

昨年末のベルギーブラスバンド選手権で見事第1位に輝き、今度のEBBCに出場する…はずでした…
***** – Brassband Willebroek(YouTube)
あ!動画の最初にインタビュー受けてる眼鏡のE♭バスの彼、4ページ目最後に作曲家としても登場します!お楽しみに!

(Brassband Willebroekと言えば薄紫色の衣装が特徴的ですが、これって指揮者の姓がヴァイオレットだからだと私は思っているんですが、皆さんどう思いますか)
Sang till Norgen – Brassband Willebroek(YouTube)
すみません、ファンファーレバンドの話題のはずなのにブラスバンドの話で終わってしまいました。

 

次のページに続きます。

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花月こころ

ベルギー近現代音楽が主な狩場。最推しはヴァンデルローストとポール・ジルソン。ブラスバンドでコルネット。

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6件のフィードバック

  1. ツイッターではお世話になっております。
    記事読ませて頂きました!
    ウィルブロークの指揮者だったフランツ・ヴァイオレットの息子さんが作曲を…!
    そういえば同じウィルブロークのソプラノ・コルネットだったベルト・ヴァン・ティエネンさんはbvtmusicという出版社を立ち上げていて、自身の編曲や、記事にもあるプロミスド・コンティネントやステイン・アールツヘールツの楽曲の楽譜を出版してますね。
    ウィルブロークのWMC2005でのスパーク宇宙の音楽は最高に好きな演奏の一つです…
    プロミスド・コンティネント、超段数の多いファンファーレスコアが凄く興味をそそられます…

    ポール・ロヴァット=クーパーのファンファーレオリジナル曲!凄いですね…
    ロヴァット=クーパーの楽曲のファンファーレ版はリュック・フェルトメン氏による編曲の楽譜がBandPress社から出ているのですが、本人によるファンファーレバンド曲というのは凄いです。

    メトロポリス1927のファンファーレ版ですが、グレイアムのファンファーレ版編曲譜を取り揃えているのもBandPress社で(Gobelin Music社というところにも何作かありますが)これもリュック・フェルトメンが編曲しています。
    過去に演奏したいと思い問い合わせたことがあったのですが、グレイアム自身が新たに氏の楽曲をファンファーレ版に編曲することについて難色を示しているというか、そういう回答をもらった覚えがあります。
    前にWMCでグレイアムの「The Essence of Time」のファンファーレ版が演奏されたようで、それはその場限りのもので出版されなかったのですが、今回のメトロポリス1927のファンファーレ版は同じようにその場限りのものなのか、出版されるのか、とても気になります…

    どの曲も聞きたかったなというのに同感です
    バンドには高齢の方もいらっしゃると思うので、そういう方達が、バンドのメンバーがかけることなくまた元気に演奏活動してもらえれば、また聴く機会があるのではないかと期待しています。
    可能性は低いと思いますがEBBCは延期となるか様子見と聞きましたので、VLOFもONFKも出来ればそうなると嬉しいですね…難しいかな…
    気がかりなのがそう言った大会が今後継続できるかどうかの経済的なダメージです。何か力になれることがあれば良いのですが…

    ONFKの1stでは、課題曲であるエデュアルド・デ・ブール(アレクサンダー・コミタスのペンネームを使っていた作曲家です)のVia ad Veniam演奏がとても楽しみでした…

    • 読んでくださりありがとうございます!
      BVT Musicを立ち上げた方がウィルブロークの奏者だった方なんですね!
      アールツヘールツやロード・ヴァイオレットのBioをBVTのサイトにあったので「ウィルブローク関係者が多い出版社だな~」くらいに思っていました…。

      ロヴァット=クーパーの作品は、曲そのものについても題材についてもあまりにも情報が少ない(ローカルネタ過ぎる)ので書きながら半信半疑でした笑
      メトロポリス1927ファンファーレ版、万が一出版されるようならぜひ演奏していただきたいです!

      経済的なダメージ…本当に心配ですね。
      VLAMOの各大会やONFKはライブ配信やアーカイブなど、いつも無料で楽しませてもらってしまっているので、せめてこういったときに何か支援させて欲しいなあ。
      デ・ブールの作品が課題曲だったんですね。それも聴きたかったなあ…
      とにかく少しでも早く収束してくれるのを祈るばかりです。

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