これからもファンファーレオルケストやりたい
ファンファーレオルケストについて
オランダやベルギー、その周辺国には“Fanfare” “Fanfareorkest”と呼ばれる、金管楽器とサクソフォン、打楽器で構成される管楽オーケストラ編成が存在し、多くの市民に親しまれている。管弦楽団のヴァイオリン、吹奏楽団のクラリネットの役割をフリューゲルホルンが担っており、力強くゴージャス、かつ温かみのあるサウンドを生み出す。
その起源については諸説あるが、19世紀半ばには既にこの編成のためにオリジナル作品が作曲されており、同時期に設立されたオーケストラのいくつかが今でも現役で活動しているのを目にすることができる。
日本で吹奏楽・英国式ブラスバンドの作曲家として知られているヨーロッパの作曲家が、この編成のために作曲していることは珍しくない。吹奏楽やブラスバンドの作品がファンファーレオルケスト向けに編曲されたり、反対にファンファーレオルケストのために書かれた作品が吹奏楽やブラスバンドで演奏されたりすることも多い。オランダやベルギーでは吹奏楽(Harmonie)、ファンファーレオルケスト(Fanfare)、ブラスバンド(Brass band)をひとつにまとめた“HaFaBra”という略語が使われており、かの国々で3つの編成が等しく愛されていることをうかがわせる。
日本では2004年に「関西ファンファーレオルケスト」「洗足学園音楽大学ファンファーレバンド(現ファンファーレオルケスト)」が結成されて以来、首都圏と関西を中心に数団体が結成・活動している。
Arsenal / Jan Van der Roost
ベルギー・メヘレン州で活動していた鉄道工場吹奏楽団(Harmonie van het Spoorwegarsenaal)の創立50周年を記念して、ベルギーの作曲家ヤン・ヴァンデルローストにより1995年に作曲されたコンサートマーチ。1996年の初演から四半世紀、世界中の吹奏楽団、ブラスバンド、ファンファーレオルケストに演奏されており、作曲者の作品の中でも最も知名度が高い作品のひとつである。
Melting the Ice / Johan Evenepoel
ベルビーのブラスバンド“Brass Band Buizingen”からの委嘱により、2003年に作曲されたブラスバンド作品「ギンヌンガガプ」(Ginnungagap…seeming emptiness)のコラールの場面を抜粋し、独立した曲として出版された作品。「ギンヌンガガプ」とは北欧神話で、天地創造以前に氷の世界と炎の世界を隔てていたとされる巨大な裂け目の名前。
De Gaastmar / Carl Wittrock
ガーストマルはオランダ北部・フリースラント州に存在する、人口280人程度の小さな村の名前である。この曲は2011年、村のファンファーレオルケスト“CMV Concordia Gaastmar”の創立100周年記念に、オランダの作曲家カール・ヴィトロックにより作曲された。夜明け、観光客で賑わう村の様子、湖上のボートから見た村の景色、村祭りの踊りの4つの場面を描いている。
La Prière / Paul Gilson (arr. Juri Briat)
「ベルギー吹奏楽の父」と呼ばれるポール・ジルソン(1865-1942)が20歳で作曲した「帰郷」(Le retour au pays)という題の組曲の冒頭部分にあたる曲。組曲では、スコットランド移民の帰郷の一部始終が豊かなオーケストレーションで描かれている。ジルソンは生涯にわたり吹奏楽・ファンファーレオルケストのための作品を書き、自身の生徒にも管楽器のための作曲を強く勧めていた。
Reprise / Yves Wuyts
“Reprise”は「再開」「繰り返し」の意味を持つ単語である。音楽の世界では、ソナタ形式の「再現部」を指す言葉でもある。この作品は2021年、ベルギーにおいて長引くロックダウンの後にアマチュア音楽活動が解禁された際、フランデレンアマチュア音楽協会(VLAMO)の委嘱を受けて作曲された。喜びに満ちた、心躍るポップチューンが音楽活動の「再開」を祝福する。
Friendship! / Harrie Janssen
オランダ東部・ヘルダーラント州のファンファーレオルケスト“Muziekvereniging La Fraternité”の創立100周年を記念し、オランダの作曲家ハリー・ヤンセンにより2013年に作曲された、底抜けに陽気でエネルギッシュなコンサートマーチ。曲のタイトルは委嘱した楽団の名前“La Fraternité”——フランス語の「友愛、友情」に由来している。