【感想】エヴァーグリーンウインドオーケストラ 第2回演奏会

エヴァーグリーンウインドオーケストラ第2回演奏会

2022/2/6(日)14:00-15:40
エヴァーグリーンウインドオーケストラ
第2回演奏会@かつしかシンフォニーヒルズ

 

存命の作曲家で、自作自演でもない演奏会で「オール○○プログラム」というのはそれほどない。(去年オールスパークやってたところあったけど)
私の推しはComposer/Conductorだし、日本のオーケストラや音大でもしっかりポストをもらってしまっているので、彼が指揮する演奏会でさえ必ずしも「オールヴァンデルロースト」とはならない。

最初に行った来日コンサート、大阪音楽大学の吹奏楽演奏会はオールヴァンデルローストでした。

大阪音楽大学第49回吹奏楽演奏会プログラム
大阪音楽大学第49回吹奏楽演奏会プログラム

2回目、フィルハーモニック・ウインズ大阪第25回定期演奏会は前半がイタリアプログラムで、後半のグロリオーゾとアマゾニア(あとアンコールのジュピター)だけが「自作自演」。

フィルハーモニック・ウインズ大阪第25回定期演奏会フライヤーより
フィルハーモニック・ウインズ大阪第25回定期演奏会フライヤーより

3. (洗足音大ファンファーレオルケスト第26回定演)前半のユビルス、I Shall Love but Thee、アンコールのマーキュリー。
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6. (【演奏会】洗足こども短期大学 幼児教育保育科ウインドバンド演奏会)オールヤンさん
7. (大阪音楽大学第51回吹奏楽演奏会)オールヤンさん(新型コロナのため中止)

 

そのほか去年2つほど来日予定があったんですが新型コロナで来日中止&プログラム変更の憂き目に遭いました(泣)

こんなもんです。

 

なので、最初に今日のエヴァグリのプログラムをみたときも「これは行かねば」となりました。まあなりますよ。
というより、実はこの演奏会の前哨戦(戦?)にあたる“モンタニャールオフ”に参加予定だったんです。残念ながらこれも新型コロナの影響で取りやめになっていました。色々なタイミングのアレで演奏会参加は見送りましたが、観客として見守りたいという気持ちがありました。

今回のプログラムは以下。
・ミネルヴァ
・カンタベリーコラール
・スパルタクス
・炎と栄光
・吹奏楽のためのアダージョ
・モンタニャールの詩

 

カンタベリー、スパルタクス、モンタニャールは(難度抜きにして)定石、といったメンツですが、その他3曲はちょっと「おお!」となる選曲。炎と栄光は残念ながら(?)プログラムに書いてあったように「日本初演」とはならないのですが(冒頭に書いた大音の演奏会でやってた…そのときも特に「初演」と銘打ってはなかった)珍しいのには変わりない。
アダージョとカンタベリーをひとつの演奏会で聴き比べできる機会も貴重ですね。大体カンタベリーか、「ちょっと捻った」という体でアダージョやるか、どっちかという印象…と書いたけど、これも大音が本プロでアダージョやった後にアンコールでカンタベリー(オルガン付)やってたわすみません

 

また、幕前演奏で木管+打楽器アンサンブルの「リクディム」の演奏がありました。どなたか書き下ろしたのかな…?一昨年デハスケから出た木管セクション版の楽譜にはピッコロとフルートがいるしな…既存のクラリネット/サックスクワイアーとも違う演奏を聴けて楽しかったです。

 

ミネルヴァはなんだかんだ生演奏聴くのがはじめてだったかもしれないです。そりゃアルセナールやマーキュリーよりは存在感薄めだけど、隠れファンも多いというマーチ。やっぱりかっこいいですね。 最近自分で演奏会とか行かない限り最近吹奏楽(はおろかフルオケ等大編成)の録音などを聴くのをさぼっているので、なんか「吹奏楽…!吹奏楽だ…!」ってなるような曲、演奏でした。 オープニングでミネルヴァいいわあ…
今、自分のバンドでもヤンさんのマーチに取り組んでいるので勉強になります。いつかうちのバンドでもミネルヴァやりたいね。ブラスバンド版。

 

カンタベリーコラール、奏者としてもかなり感情移入しやすい曲だと思うのですが、特にクライマックス部分を相当作り込んでたというか、サウンドからこだわりを感じました。作り込みたい!って思わせる曲だというのもありますが…。しっかり「オルガンの音」でした。最後のppまで味わい尽くしました。

 

第1部メインのスパルタクス。あの難しい曲をあそこまで持っていけたのはすごいなあ。多分奏者の皆さまもそれぞれに参考音源を聴いたりして、自分の作りたい音のイメージを持ってたんじゃないかな…と思うサウンドをしていました。イングリッシュホルンソロからラストの盛り上がりが見事でした。
最近スパルタクス聴く度に作曲/出版当時の作曲者とデハスケ社長に思いを馳せてしまうんですよね…
個人的にスパルタクスって管弦楽で書いてもちゃんと映える曲だと思うんですよ。音のイメージができる。そういう曲を吹奏楽で書いてくれたヤン・ヴァンデルローストと、このクソデカ編成クソむず曲を当時のスタートアップ出版社から出版してくれたヤン・デハーンに感謝してます。聴く度毎回。

 

第2部1曲目の炎と栄光。この曲を第2部のオープニングにして外れるわけがないんですよね~~!!!大好きなオープナーです。演奏の中でメリハリがもう少し欲しいなあ…というところはありつつ、でも参考音源も少ない中、よく取り上げてくれたなあ…と感謝です。 この曲はぜひもっと演奏されてほしい。
プログラムノートにも記載がありましたが、最後に前半の幅広い旋律が後半の軽やかなリズムに重なって戻ってくるんですよね。この後のモンタニャールでも使われるけど、曲のクライマックスで前のメロディが戻ってくるのはヤンさんの常套手段だし(もちろん他にも使ってる人はいる)私の大好物です。アマゾニアの第2・3楽章のテーマが第5楽章で戻ってくるとか。横浜音祭り序曲で第2場面と第3場面のテーマが重なるとか。スパークの「ベートーヴェンの表敬」もこういう場面があったと思う。大好きです。

 

吹奏楽(管楽器)のためのアダージョは、その知名度に反して個人的にやたら実演を聴く機会が多い曲なのですが(今日で5回目くらい?)あそこまでテンポを落とした演奏は初めて聴いたかもしれないです…。テンポに比例してかなり重みが増した演奏でした。
たまにいつもツイッターで書いていることなのですが、カンタベリーコラールが「カンタベリー大聖堂」という、言うなれば「神」のような、天上の存在への祈りだとしたら、アダージョは隣人、人間同士の祈りを描いているように感じています。前半と後半でそんな対比もしながら聴いていました。
あと今日やっと気付いたんですが、元々ファンファーレオルケストの曲だから吹奏楽編成でもあんなにソプラノサックスが活躍してるんですかね…?多分そういうことですよね…?今まであんまりソプラノ気にしてなかった。低音ばっかり聴いてた(おい)

 

本演奏会のメイン、モンタニャールの詩。モンタニャールはさすがに奏者の皆さまも何回も聴いているんだろうな…という感じの、作りたいサウンドの目標があることを感じる演奏でした。冒頭のピークだったり、ルネサンス舞踊のアンサンブルの作り込みが素晴らしかった。
リコーダー、私の席からはチューバの人とトランペットの人が吹いてるのが見えて、よくあんな離れたところでアンサンブルできるなあ…と思って聴いていました。(どうしてそんなことになったんだという疑問はありつつ)
きっとこの情勢で、(演奏会が延びたとはいえ)練習・合奏時間の確保もなかなか難しかったと思うのですが、その中でここまで仕上げたということに敬意を表します。執念さえ感じる演奏でした。

 

全体として、ところどころセクション間のバランスとか、ダイナミクスの幅とか、もっと…!というところはあるにはありましたが、何か今以上に求めるならばそのへん…という具合です。素晴らしい演奏会だったと思います。聴きに行ってよかった。

 

 

アンコールの曲目の予想が非常に難しかったです。パッと思いつくのはアルセナールじゃないですか(?)アルセナールじゃなかったら何やるんだろう…?冒頭にマーチはやってるし…カンタベリーもアダージョも本プロでやってるし…??何??イントロを待つしかなかったのですが…

 

うわ…わ…

わかってやがる!!わかってやがるぞこのバンド!!
アンコールでSayonaraやるのはわかってやがりすぎだろ!!!

ヤンさん版「蛍の光」の“Sayonara”を演奏してくださいました。今日実演初めて聴いた。動揺と感動がすごかったです。

 

アンコール2曲目がアルセナールでほっとしました。あそこでアルセナールやらなかったら逆にその矜持がすごいが。

 

アルセナールの前に代表・指揮者の小林さんからの挨拶があり、めちゃくちゃ頷きながら聴いていました。ヴァンデルローストについて「一番大好きな作曲家」とおっしゃってたところで勝手に「仲間!!!」と思ったりしつつ。

アルセナールはすごくまとまった演奏でした。安定感のある、スマートなマーチ。勢いとか気持ちが先行してる印象がない、成熟したとっても美しい演奏でした。ここまでスッキリしたアンコールのアルセナールも珍しいなと思います(そこんとこ自作自演アンコールのアルセナールは大体冷静さが迷子(それもまた大好きなんですが))。

 

アンコール曲目

(“Y”ってなんだろう)

 

次回の演奏会の日程も決まっているようで(来年2月)、楽しみにしています。次も行きたい。家からそんなに遠くないのも嬉しい。
(今日実はシンフォニーヒルズとリリオホールを混同して余裕ぶっこいてたらとっくに家出ないと間に合わない時間になってて焦ったりしたりしなかったり)

次回に向けたお試し合奏会も企画しているようですよ!

 

最後に自分の宣伝も2つほど…

 

【さりげなく自分の宣伝その1】
私の所属するブラスバンド“Happy Penguin Brass”が今年5月に演奏会を開催します。土曜午前中、東京の小平です。ヴァンデルローストのこれまた知名度の低いマーチ「モンタナ」や、福田洋介「さくらのうた」のご本人アレンジによるブラスバンド版を演奏します。チケットは4月に発売開始なので、今のうちにスケジュールを押さえていただければと思います。(今回もフライヤーデザイン担当しました)

 

【さりげなく自分の宣伝その2】
私が参加する同人サークル“Wind Expeditie”が8月の夏コミに向けて「アルセナール合同誌」を企画中です。初演から四半世紀にわたり愛され続けるマーチ「アルセナール」にまつわる思い出話、溢れる愛などをしたためた文章を募集しています(6月上旬まで)。日数に余裕はありますが、「書きたい!!参加したい!!」と思った方は先に参加表明だけでもできるので、まずはリンク先の要項をご覧ください。短文でのご参加も大歓迎です。本人に見せるとかそういうことはしないので(私が見せたくない)安心して重い思いをぶつけていただければと思います。自分語りでも全く問題ありませんし、むしろそういうのを求めている節があります。

花月こころ

ベルギー近現代音楽が主な狩場。最推しはヴァンデルローストとポール・ジルソン。ブラスバンドでコルネット。

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