2020年を生き抜いてくれて

Gelukkige Verjaardag, grote maestro Jan Van der Roost!!

本日3月1日は、作曲家/指揮者ヤン・ヴァンデルローストの65歳のお誕生日です。おめでとうございます!
2021年というこの年に、あなたがこうしてお誕生日を迎えられること、本当に本当に、ほんとうに嬉しく思います。どうかどうかこれからも末永く、心身ともに健康に、ご家族ご友人とともに楽しい毎日をお過ごしください。

ちなみにアイキャッチ画像は今うちにあるヤンさんの作品のスコア&ヤンさん作品オンリーのCDたちです。
去年はこうでした。↓

増えたな。めっちゃ増えたな…あとナクソス2枚撮るの忘れたことに気付いた…

2020年は、まず2月26日にイベント開催自粛要請が出てから、ヤンさんが出演予定だった3月8日の大阪音大吹奏楽演奏会が中止になり(→新型肺炎が心配)、その後来日予定があったとしてもあんな中来日できるわけもなく、ファンとしては非常に寂しい、歯がゆい日々を過ごしていました(たとえアントウェルペンにいようときっと同じような状況だったと思いますが)。前年シエナが収録した新曲(→【感想】シエナウインドオーケストラ第48回定期演奏会)のCD発売の話も、コロナのせいかどこかに行っちゃったし…

ヤンさんは非常にSNS無精のため、各種Webマガジンや周囲の人のSNSから頑張って情報収集していました。新曲を聴いたり指揮をする様子を見たりはできなかったけれど、様々なインタビューに答えたり、トークライブ配信やウェビナーに招かれたり、2020年あんな中でも全体的な活動は割と多かったのでは…と思います。新曲完成報告もいくつか目にすることができました。

本日は、2020年3月1日~2021年2月28日間のヤンさんの活動・Web露出を、私が観測できた範囲でまとめたいと思います。オランダ語ばっかり、たまに英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、みたいになってしまいますが、自動翻訳を駆使してお楽しみください。

春季(2020年3月~5月)

インタビュー「ここでは音楽の音は聞こえません!」

オランダのアマチュア音楽マガジン“Klankwijzer”アーカイブ(2020年第13週)

オランダ・ベルギーの作曲家が新型コロナ感染拡大でどのような影響を受けているか、コロナ禍からインスピレーションを受けた作品を書くつもりはあるか、などを答えたインタビュー。オリジナルの電子書籍ファイルだと自動翻訳が効かないので、こちらのドイツ語翻訳記事のほうが読みやすいかも→ドイツ語翻訳記事/BlasMusik

ヤンさんだけでなく、このインタビュー記事全体が衝撃的でしたね…デメイさんとかヤコブさんとか結構本気で心配になりました。ヤンさんは外での仕事が減って、かえって落ち着いて作曲ができるようになってしまったようでフフッとなりました。「3つのかなり大きなオーケストラ作品」が気になりすぎる。同じようなことをクララ(フランデレンのクラシック音楽ラジオ)の記事でも書いてましたね(Hoe gaat het ermee? – Klara)

Let’s Play “ARSENAL” with Jan Van der Roost & Osakan Philharmonic Winds


これは感動的でしたね!!!まだ感染拡大が始まって間もない、世界中がどうしたらいいか困惑している時期にこれを企画していただけたこと、こんな素敵な指揮とメッセージをいただけたこと、本当に嬉しかったです。最初に再生したとき泣いたような記憶があるし、何回再生したかわかりません。こんなにニコニコで動画をとってくれたんだな…と思うと嬉しいですね。私は練習場所が確保できずに参加を断念しましたが…

夏季(2020年6月~8月)

イタリアの音楽クラブによるトークライブ配信


↑「利用できません」になってますが「Facebookで見る」から視聴できます

こうやって配信に参加するのはこれが初めてだったかな?フランコ・チェザリーニさんと、ポルトガルの作曲家カルロス・マルケスさんとZoomトークライブに参加していました。進行の方とチェザリーニさんはイタリア語、ヤンさんとマルケスさんは英語で話しています。


↑このツイートからツリーで実況をぶら下げてあります。個人的ハイライトは

  • ヤンさんがグレグソンやスパークを演奏したことがあって、吹奏楽曲を書き始めた当時かなり影響を受けた
      • マルケス「ヴァンデルローストもチェザリーニも演奏しました」
          • 「アルセナールみたいなマーチを書いてください!」「これはいいマーチですね、でもアルセナールはもっといい」

          チェザリーニのイタリア語がまったくわからないのが悔しかったですね。久しぶりにもう一回観ようかな。

          「アルセナール」金管セクション版、「リクディム」木管セクション版出版

          withコロナ、afterコロナの中でも少人数で合奏ができるよう、ハルレナード・ヨーロッパから「バンドセクションシリーズ」が登場。同社から出版されている吹奏楽の人気作品を木管・金管セクション+打楽器で演奏することができる楽譜シリーズです。ヤンさんの作品からは「アルセナール」が金管向けに、「リクディム」が木管向けに編曲されました。アルセナールは演奏動画が公式YouTubeチャンネルにアップされています(指揮:ケヴィン・ホーベン、演奏:ペーアー吹奏楽団)

          …アルセナールを金管だけのものにして木管奏者に命狙われないか、とか若干の懸念がありますが…あとリクディムはまたバージョン増えましたね…
          Arsenal(Band Section Series)
          Rikudim(Band Section Series)

          秋季(2020年9月~11月)

          合唱曲“Amor, io fallo”がヨーロッパ合唱作曲家賞(アカペラ部門)を受賞

          ヨーロッパ合唱作曲家賞
          Facebookで流れてきたときはびっくりしました。合唱曲でも賞取っちゃうのか!驚くとともに、本当に嬉しく思いました。一人ではしゃいでいました。
          “Amor, io fallo”は2019年にフランデレンで行われた国際合唱コンクールの混声合唱部門課題曲として作曲されました。中世イタリアの詩人ペトラルカの詩が歌詞に用いられています。

          2020年のヨーロッパ合唱作曲家賞ではアカペラ部門、伴奏つき部門、スペシャルメンション(特別表彰)含め、4名全員がフランデレンの作曲家だったということで、フランデレンの合唱作品のレベルを思い知らされます。皆さん本当におめでとうございます。すごい…

          組曲「カレイドスコープ」初演

          Vanavond ontzettend genoten van de première van een wel heel bijzondere compositie. Zes componisten schreven samen een…

          Klaas Coulembierさんの投稿 2020年10月1日木曜日

          2020年3月、ベルギーの著名な指揮者ディルク・デカルヴェ(Dirk De Caliwe)が急逝。組曲「カレイドスコープ」は、生前彼と親交が深かった6人の作曲家による共同作品で、デカルヴェの学生であった2人の指揮者のために書かれました。
          「6人の作曲家」の内訳は

                • クラース・コーレンビール Klaas Coulembier
                    • ヤン・ハーデルマン Jan Hadermann
                        • トム・ホンデヘム Tom Hondeghem
                            • バルト・ピクール Bart Picqueur
                                • ヤン・ヴァンデルロースト Jan Van der Roost
                                    • ステヴェン・ヴェルハールト Steven Verhaert

                                    (アルファベット順)

                                    楽譜の出版、音源の解禁が楽しみです。

                                    ヘルダースファンファーレオルケスト(オランダ)トークライブ配信


                                    オランダのヘルダースファンファーレオルケストのライブラリアン、ベルト・フローテデさんと指揮者のエリック・ファンデコルクさんによるライブ配信にゲストとして参加していました。オランダ語なので例によって全然聞き取れないのですが、「自分の中で一番気に入っている曲は?」という質問に対し、いつも通り「自分の曲は子どもみたいなものだから選べない」と答えているのはなんとなくわかりました。残念ながら該当動画は非公開にされてしまっています…

                                    冬季(2020年12月~2021年2月)

                                    ファンファーレオルケスト新曲完成


                                    フランデレンのトップファンファーレ9団体が集まり、ファンファーレオルケストのレパートリーを拡張しようと試みる企画、“Fanfarissimo”。企画の一環として、ヤンさんにファンファーレオルケスト作品が委嘱されました。
                                    Fanfarissimo 公式サイト
                                    東フランデレン州・マッセメンのファンファーレオルケスト“KFO Volksopbeuring”によって、今年11月に初演される予定です。久しぶりのファンファーレオルケスト作品ということで、どんな曲になっているか楽しみで仕方がありません!

                                    ヘルダースファンファーレオルケスト ニューイヤー配信


                                    11月の配信に続き、ニューイヤー配信にもゲストとして登場しました。ヘルダースファンファーレオルケストによる「オスティナーティ」の演奏も少しオンエアされました。この時は本当に何の話してるかちっともわからなかった…


                                    ↑このツイート前後で実況をツリーでぶら下げてあるので、もしよろしければ視聴の参考にしてください(参考になるほどのこと書いてない)

                                    フェスティヴァルブラスバンド(ベルギー)ウェビナー配信

                                    ベルギーのトップブラスバンドのひとつ・フェスティヴァルブラスバンドが主催するウェビナーで講演を行いました。全部で2時間ほどの配信でとても充実した内容なのだろう…と推測できるのですが、何せやはりすべてオランダ語。たまに海外でのエピソードで「こんなこと言われた」というときに英語になるくらい…このあたりからオランダ語が理解できないことに腹が立ってきて、本腰入れてオランダ語を勉強しようと心に決めました。
                                    また実況を下のツイートにぶら下げてあるのでよかったら視聴の参考にしてください。固有名詞から話が推測できることも割とあります。


                                    個人的にはニック・ヴァンエルセン(ギャラリービューで一番左上にいる方)とヤンさんの絡みが見れたのが嬉しかったです。ニックさんも今注目している若手の作曲家で、フェスティヴァルブラスバンドのフリューゲルホルン奏者兼コンポーザー・イン・レジデンスを務めています。(→VLAMOオープンファンファーレ選手権で演奏されるはずだった曲)
                                    あとあまりにも「ブラスバンドのためのラプソディ」の話をするのでスコアを買ってしまいました。「ラプソディ」はおそらくヤンさんの一番最初のブラスバンド作品で、1982年のベルギーブラスバンド選手権第2部門の課題曲です。

                                    ヴォルクスガルム吹奏楽団(ベルギー)ウェビナー配信


                                    こちらのウェビナーはライブ配信があったことを後日知り、事前に情報を入手できなかったことにさんざん喚いていたのですが、なんとフルでYouTubeに公開してくれました。なんて慈悲深いんだヴォルクスガルム吹奏楽団。
                                    洗足学園音楽大学でファンファーレオルケストを始めたときの話、横浜音祭りでゲストとして指揮したときの話(→【感想】ぱんだウインドオーケストラ わくわくブラス! at横浜音祭り2019)、吹奏楽曲「ファンタジア・ヘルヴェチカ」の話(委嘱団体が創立111周年で、「11分11秒で終わる曲を書いてください!」といわれた)、ご自身の教え子である作曲家の話…など、なんとなく聞き取れる範囲でも盛りだくさんです。

                                    ホーベン・エディションズ ウェビナー配信

                                    ベルギーの作曲家・指揮者で、ヤンさんの教え子であるケヴィン・ホーベンが、今年1月にご自身の出版社ホーベン・エディションズ Houben Editionsを設立しました。フィリップ・スパークのアングロミュージックや、ヨハン・デメイのアムステルミュージックと同じように、ハルレナード・ヨーロッパ系列の独自の出版社ということになるのだと思われます。おめでとうございます!
                                    Houben Editions
                                    ホーベンさんは出版社の活動の一環として、様々な音楽家たちのWeb講演を開催しています。ヤンさんは2月19日の回で講演を行い、ご自身の作品“I Shall Love but Thee”や「スパルタクス」の解説を中心にお話ししていました。
                                    ↓当時の実況


                                    このウェビナーは参加費無料だったのですが、Zoomミーティングルームでのクローズドなイベントだったため、「オランダ語わからないのに参加して大丈夫だろうか…みんな顔出ししなきゃいけないのだろうか…」と不安で、直前まで参加をためらっていました。覚悟を決めて参加したら、参加者100人のうち大半がビデオオフにしていたし、特に発言しなきゃいけない機会もなかったし、少しでも面白い話が聞けたので、思い切って参加してよかったです。

                                    スペインの音楽メディア“Nuestras Bandas de Música”のインタビュー

                                    ヤン・ヴァンデルローストへのインタビュー- nuestras Bandas de Música
                                    パンデミック以後に書かれた、ここまでボリュームあるインタビュー記事はこれが初めてかも。要因は不明ですが、かなり綺麗に自動翻訳されて読みやすいです。冒頭の「65歳の誕生日を迎えるにあたって」の回答の「正式に引退するときです…」で私の寿命が半分になりましたが、「教師として」定年退職する、ということでした。やめてよびっくりするじゃん。
                                    コロナ禍の吹奏楽シーンの状況についても、非常にヤンさんらしい回答をしていますね。「私は楽観的で、医学を信じている」の部分で、本当にもう「一生ついていきます」となりました。

                                    今日の日本時間午後9時ごろからは、フランデレンのクラシック音楽ラジオKlaraでヤンさんのお誕生日企画を組んでくれているので、そちらも楽しみにしています。ありがとうKlara。
                                    Jan Van der Roost 65 – Klara

                                    今年はヤンさんが去年よりも多くのプロ・アマチュア音楽家と触れ合えること、そしてできるだけ早くまた日本にも来てくれること、私もベルギーに行けること、心から願っています。遠く離れていてもともに音楽を愛する気持ちに変わりはありませんが、また世界中の音楽愛好家が実際に会って、顔をみて、みんなが一緒に音楽を楽しめる日々が、できるだけ早く戻ってきますように。

                                    花月こころ

                                    ベルギー近現代音楽が主な狩場。最推しはヴァンデルローストとポール・ジルソン。ブラスバンドでコルネット。

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