【演奏会】洗足こども短期大学 幼児教育保育科ウインドバンド演奏会
2019/12/02(月)18:30開場、19:00-20:10
洗足こども短期大学 幼児教育保育科ウインドバンド演奏会
指揮:ヤン・ヴァンデルロースト
9月頃にプログラムが発表された時は「フラッシングウインズ」「アダージョ」「アルセナール」「プスタ」の4曲で、「今日日こんな定番曲だけで攻めてくる演奏会も中々無いぞ!!」と驚いたものです。
その後正式なプレスリリースでアルセナールがマーキュリーに変わり、HIDAMARI(陽だまり)が追加されました。
陽だまりは楽譜は出版済みであるものの音源は未リリースで、昨年のエーデルワイス・ブラス・オーケストラでの初演以来1年ぶりに聴くことになるので狂喜乱舞しました。難しそうだったけれどとても良い曲だったので。
当日朝。
今日、演奏会に行く実感が湧かない。平日で普通に学校があるから?でも学校がある日も演奏会行くよ私。
なんだか「ヴァンデルローストって実在するんですか…?」レベルで実感湧かない。今更何言ってんだこの人は。どうした?あんなに楽しみだったのに…
最近ヴァンデルローストの曲聴きすぎてるんだか何なんだか、ヴァンデルローストに関する知識や情報群がゲシュタルト崩壊を起こしてるみたいです。酷いと、ほんの一瞬「アルセナールってヴァンデルローストの曲だっけ…」とか思ったりします。何となく現実感がない。
演奏会行くの忘れるんじゃない?という不安が脳をよぎる程でしたが、問題なく学校を出て溝の口に向かいました。
プログラム
フラッシング・ウインズ
管楽器のためのアダージョ
プスタ-4つのロマの舞曲-
コンテストマーチ「マーキュリー」
HIDAMARI
アンコール-アルセナール
未就学児入場OKなのもあってか総演奏時間は短め。幼い子どもの声もちらほらと聞こえます。
今回のヴァンデルローストの指揮は、「ヤン先生」という呼び方が一番しっくりくると感じる指揮でした。教育者としての一面がかなり強く感じられました。
ヴァンデルローストがプロのバンドでもなく音大のバンドでもないバンドを指揮しているのを見るのは初めて(ぱんだWOのわくわくブラスはアマチュアと合同だったけれどプロバンドの企画なのでプロにカウント)。
そのためか、指揮が奏者に要求を出し、奏者がそれに応える、というやり取りがとてもはっきり見て・聴いて取れました。
リアルタイムで音楽を作っていく、ある種の生々しい現場に立ち会っている感じ。
曲目も、よく知られていてよく演奏されているけど地味に難しい曲が揃ったプログラム。フラッシング・ウインズとか、プスタとか、実はグレード5あるんですよね…
バンドは大編成で、パート入れ替えはありましたが乗り番/降り番はなし。チューニングはB♭で、一般的なアマチュアバンドのスタイルでした。
フラッシング・ウインズ
指揮を見て、本当に2拍子じゃなくて3拍子なんだ!という個人的な感動。前述のとおり実は難易度の高い曲ですが、完成度はかなり高かったと思います。
指揮者が演奏後に頑張って起立を促しているところがすごく先生っぽかったです。(立つの慣れてないと躊躇するよね)
管楽器のためのアダージョ
指揮が低音を求めて、奏者が応える様子がはっきりわかって感動しました。心なしかいつも(プロや音大のバンド)での指揮よりサインがはっきりしてるように見えました。
アダージョの生演奏を聴くのは今回で通算4回目(うち2回は自作自演)。1回はアンコールでの演奏で、個人的にやたらとご縁がある曲です。
プスタ
生演奏を聴くのは、実は今回が初めて。ソロや1パートだけで吹く場面がやたら多い作品。今回は大編成での演奏だったので1パートを2名で吹いていたりしたけれど、皆さんとても素晴らしい演奏でした。ソロパートが終わったときは、奏者でもないのに心の中でガッツポーズをしていました。
プスタは元々、青少年の音楽キャンプのために書かれたという作品で、当時と編成は違えど(当時は管弦ピアノ合同バンドだったらしい)、こんな風に音楽を作っていったのかなあ、と思いを馳せました。
マーキュリー
学生らしく、とても生き生きした明るい演奏。オリジナルがブラスバンド編成なのに、コンサートバンド版ではサックスが非常に魅力的なサウンドをしているな…という再発見もあり。
マーキュリーの生演奏を聴くのは今回で3回目なんですが、今のところ自作自演しか聴いていません。しかも未だオリジナルのブラスバンド版の生演奏を聴けていません。色々おかしいぞ。
陽だまり
昨年のエーデルワイス・ブラス・オーケストラによる世界初演以来、約1年ぶりに聴きました。印象は去年と大体同じで「すごく素敵な曲なんだが音の組み立てがめっちゃ繊細で難しそう」。楽譜の難易度は4.5なので、難しくないと言ったら嘘でしょう。
以下、作品のその場での印象。
冒頭は荘厳、を超えて幻想的ですらある。「グリム童話の森」を想起させる。第1場面は木管中心の本当に美しいメロディ。第2場面―中間部―は吹奏楽の古典的スタイルを思わせる。近年作「横浜音祭り序曲」「ファンタジア・ヘルヴェチカ」の中間部のようなロマンティックさ。
第3場面は堂々としたマーチ。冒頭のトランペット、私はヴァンデルローストよりむしろアッペルモントを意識してしまったような力強いファンファーレ。
クラシカル、シンフォニック、シネマティック、ポピュラー風味を絶妙なバランスで織り込んでいる。面白い。
他の4曲が相当な名曲・定番曲であるのに対し、陽だまりは去年初演されたばかりで出版社から音源も出てないくらいの新作なので、演奏にも不安があったと思いますが、ほとんど聴いたことがない曲をよくここまで仕上げたなあ、と感動。ブラボー!
ヴァンデルロースト自作自演コンサート恒例の、アンコール前マイク無しMC。
「皆さんこんばんは、ありがとうございます(日本語)」と挨拶。
今回の演奏会・リハーサルについて「プロフェッショナルでも、音大の学生でもない…しかし彼女らはハート、愛を持っていて、3、4日の練習で演奏のクオリティはみるみる上がりました(聞き取れた単語を無理やり繋げたうろ覚え訳)」。
MCの間には指導担当の先生を紹介。
「フルタせんせい、どこですかー?(日本語)」と先生を呼ぶヤン先生。担当の古田先生と石井先生への拍手を、観客に促していました。
そして短大生のバンドメンバーについて、「彼女らの将来の職業は子どもたちの世話をする素晴らしい仕事です」と話した後、
「私には4人の子ども、8人のgrand children、”まご”がいます。”おじいちゃんです!”(ダッシュ内日本語)」と、自らの家族について話す場面も。後ろの方から「えー!?」という声も聞こえましたが、驚いてた観客の方は子どもと孫の人数に驚いたのか、ヴァンデルローストがおじいちゃんであることに驚いたのか、どっちだ…
そして「もう一曲アンコールに、私の最も人気のあるマーチを演奏します」という紹介の後、最後にアルセナールを演奏。
かなり勢いよく入ったのでややテンポ速めのアルセナールでしたが、さすがにクオリティが高い演奏でした。
冒頭にも書いたとおり、「指揮者とプレイヤー」という関係のみならず、「先生と学生」という関係が演奏の姿勢に強く表れていた、今回の演奏会。ヴァンデルローストの指揮によるリハーサルは3~4日だったということですが、1~2週間、あるいは1ヶ月、じっくりと時間をかけて指導を受けたら、もっと面白くなるんじゃないかな~なんて思いを巡らせたりしていました。無理なのは分かってるんだけど…!
そんな、いつもと違う視点でも楽しめた演奏会でした。
こういう演奏会、もっと聴いてみたい!
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