3つのグランドオーヴァーチュア、2つのコンサートピース

ヴァンデルローストの作品の中には、「グランド・オーヴァーチュア」という副題の付いたものが3つあります。

作曲年順に

クレセントムーン
世界初演…2011/11/19 関西学院大学応援団総部吹奏楽部の演奏で
グレード:5 演奏時間:約7~8分

 

オオサカンジュビリー
世界初演…2014/9/23 フィルハーモニックウインズ大阪の演奏で
グレード:5 演奏時間:約15分

 

グロリオーゾ
世界初演…2017/2/11 シエナ・ウインド・オーケストラの演奏で
グレード:5 演奏時間:約15~16分

 

3つともすべて「日本のバンドの委嘱」で、「2010年代」に書かれた「グレード5」の曲!
だということに最近気づきました。クレセントムーンてもうちょっと前の曲だと思ってた。
クレセントムーンだけ演奏時間が他2曲の半分くらいと短めなんですが、後の2曲はプロ楽団の委嘱作品なので特に長いのかもしれません。

 

2010年代は他にも大きめの作品がバンバン作曲されてて、
例えば一番大きいのだと「Es War Einmal…(むかしむかし…)」だったり、
第6回アドルフ・サックス国際コンクールの課題曲の協奏曲「Images」だったり、
直近だとブラックダイクバンドのトロンボーン奏者、ブレット・ベイカー委嘱の協奏曲「Contrasts」だったりが挙げられるんですが、純粋な「バンドのための」作品だと、忘れてはいけないのが下記2曲。

 

いにしえの時から
2009年ヨーロピアン・ブラスバンド選手権課題曲
ウインド版世界初演…2010/6/18 タッド・ウインドシンフォニーの演奏で
グレード:6 演奏時間:約16~17分

 

オスティナーティ
ファンファーレ版世界初演…2011/6/11 洗足学園大学ファンファーレオルケストの演奏で
ウインド版世界初演…2012/6/8 タッド・ウインドシンフォニーの演奏で
グレード:6 演奏時間:約19分

 

双方15分超。オスティナーティに至っては20分近い。しかも最高難度。
どちらもオリジナルはウインド編成(日本で一般的な吹奏楽の編成)ではないのだけれど、発表からほどなくしてウインド版に編曲され、タッド・ウインドシンフォニーが世界初演を務めています。
オスティナーティに至ってはオリジナル版も国内バンドの委嘱で書かれました。

洗足ファンファーレオルケストはいいぞ。今秋の定演はスパークが来て宇宙の音楽の自作自演やるから皆聴きに行こうぜ。
ファンファーレオルケスト第28回定期演奏会ー洗足学園音楽大学

 

こうしたラインナップを見て、
ヴァンデルローストが日本のトップバンドに全幅の信頼を置いているのが分かってたまらなくなってこんな記事を書いています。

ちなみに、フィルハーモニック・ウインズ大阪は上記の5曲すべて定期演奏会で、作曲家の自作自演で演奏しています。ついでに「Es War Einmal…」の歌無し版「グリム童話の森」も演奏しています(演奏時間約16分、グレード5)。
グロリオーゾは去年の定演で生演奏を聴いてきました。ほんとパワフル、感動しました。

いにしえもオスティナーティもタッドの初演の音源が筆者の手元にあるのだけれど、とにかく最高。エキサイティング。超カッコいいので持ってない人はぜひ手に入れて欲しいです。

 

 

 

この5曲はヴァンデルロースト作品の中でも筆者がめちゃめちゃ聴いてきた5曲なので、自分の中で独自解釈が膨らみに膨らんでどうしようもなくなってきたので、この下にいろいろ書いておきました。(アルファベット順)
曲解説とか全くないし、役に立つ情報も全くありません。
オチも〆もなし。

クレセントムーン

 

冒頭のファンファーレがたいそうシンフォニックである。外灯一つ無い夜の森に、巨大な三日月が昇ってきた感じ。ファンファーレ部分がいちばんゆったりで、そのほかはずっといけいけわちゃわちゃしている。
聴き始めて程ないころから、「三日月に浮かれて魑魅魍魎(ちみもうりょう)が踊りあかす」イメージが筆者の脳内で繰り広げられている。例えば、ワルツの場面では泉の上でセイレーンが踊っていたりする。ドワーフ、キツネ、オオカミ、その他獣・妖怪類。
曲中にはこんなダークな場面はないのだけれど、子どもが森に迷い込んだら確実に人ならぬものの仲間入りをさせられる。
泉のイメージはピアノの音からも浮かんでくる。月の光が水面に映ってキラキラしている。
最後に「次の三日月の日にまた会おう」と約束して、それぞれの居場所に帰っていくのである。

いにしえの時から

 

混沌の中から飛び出すホルン。昨日今日あたりで気付いたことだが、この曲は鐘の音だ。大聖堂の鐘の音。あとオルガン。なぜか教会の塔から海が見えるイメージ。
サックスソロがかっこよすぎる。クラリネットで感情が溢れる。静かで厳粛な場面がかなり長い。
厳粛さが開けて、テンポが上がってからはずっとヴァンデルロースト的音形が続く。「ヴァンデルロースト的音形」ってなんじゃ、という感じだが、4分音符、裏4分音符、木管楽器の8・16分音符の動きが特徴的なのだ(後でちゃんとまとめて別記事にしたいね)。ラスト2分くらいで、金管の旋律の後ろで動いてる木管なんか本当にVdR音形。
ヴァンデルロースト作品の中ではそれほど重さがなく、アーバンな印象(断トツアーバンなのは横浜音祭り序曲だけど)。

オオサカン・ジュビリー

 

珍しく?高音木管のフィーチャー度が強くて驚く。ふんわり軽く、爽やかな雰囲気。
アドルフサックスオマージュも入っているので(初演年が生誕200周年だったからかも)サックスもカッコいい。あとハープが大活躍してる。かなりシンフォニック。
A-B-Aの3部構成で、Aは本当に木管中心。中間部でやっと金管が出てきてバラードを奏でる。ピッコロの音、本人に全くそういう意図がなくても聴いてるこっちが勝手に感傷的になる。サックスの裏のファゴットが好き。
大阪城公園をはじめて散歩したときの爽やかさとか新鮮さとかの情景が浮かんでくる。桜が咲いているイメージ、桜の季節に大阪行ったことないのに。

オスティナーティ

 

耳が足りない。全然足りない。ただこれ以上耳が増えても脳のキャパオーバーが起こるだけである。カノン進行とか出てくる、ポリフォニックな構成の曲。ラグジュアリー。
圧倒的すぎて感情がどっか行く。
3部構成。第1場面はペンタトニック(5音音階)で、雅!な感じ。イメージカラーは朱色に金。
第2場面は秘境に花畑が広がっていて、蝶が舞ってる。後半、切なさで死にそうになる。イメージカラーは青みピンク~紫っぽいシルバー。
第3場面は、何故か低音のメロディから「和」を感じる。裏のラッパとシロフォンのせい?
金管楽器の主旋律と木管楽器の細かい音形が同時進行していくところがめちゃめちゃカッコいい。イメージカラーは黒地に金、金地に黒かもしれない。
イメージカラーが回転寿司屋の皿っぽいと昨日気付いた。

花月こころ

ベルギー近現代音楽が主な狩場。最推しはヴァンデルローストとポール・ジルソン。ブラスバンドでコルネット。

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